ししもとの読書ノート2.0

自分らしく生きるために知識をつける

何かをおすすめすることの難しさを考えずにはいられなかった|感想『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

以前ものすごく話題になったので、今更すぎるかもしれませんが、

花田奈々子『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

を読みました。

 

どんな本?

タイトルにある通りなんですが、ヴィレッジヴァンガードで店長を勤めていた著者が、夫との別居をきっかけに、出会い系サイト(といっても恋愛的なものというよりは、文化交流目的のサイトだったようです)を通して会った初対面の人に、本をおすすめすることで、得られたアレコレの体験談。

著者は「本をおすすめしたい」というモチベーションですが、単純に「恋愛的な出会い」を求めて登録している人ももちろんいるわけで。

そういう噛み合わなさに、読んでいるこちらも「うっ」となったりハラハラしながら、一気に読んでしまいました。

ほとんどが「一度会ってお話しただけで終わり」の関係ようでしたので、「そういう積みあがらない感じ、空しくならないのかな」と思っていたのですが、最終的に著者が手にいれたのは類まれなる行動力

初対面の人と会う・話すこと自体のハードルが下がったことで、それまで著者があこがれていた人や会いたい人に、直接メールを送って(サイトを介さずに)会えるようになっていきます。

疑問に感じていた店長職もやめ、離婚もし、自分で小さな書店を開き、そこにやってきた人々との交流。

特にお母さんを亡くされた悲しみで新潟からやってきた女性に本をすすめるシーンはジーンとなりました。

「出会い系」と聞くとパンチが強いですが、著者が行っていたのは、自分の殻を破ることだったんだな、と思います(ちょっと荒療治的だけれど)。

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思ったこと:何かをおすすめするのって、難しい

そもそも相手が欲しているかどうか

自分の視点から見て、「この人にはこれが合っている」とか「この本読めばラクになるはず」という確信があったとしても、そもそも受け手のほうが情報を欲していないと、「へえー」で終わりますよね。

本に限ったことではなく、映画を観る習慣のない人に映画を勧めても、まあ忙しい日々の中わざわざ時間つくって……というのは結構ハードル高いですよね。

おすすめした側としても、見返りを求めるつもりはなくても、相手に響かなかったんだなと思うと、なんか残念な気持ちになりますしね。

だから、「何かをおすすめする」って非常に難しいよな、と思います。

(余談:おすすめされること自体が苦手なパターンも)

読書感想ブログを運営しておきながアレですが……
私自身、面と向かって「おすすめされる」こと自体がちょっと苦手でして。

なぜかというと、私にとって「〇〇がおすすめ」は「絶対これにしろ」と同義だったからなんですよね(家庭環境の影響で)。

「〇〇にしたら?」は純粋なアドバイスと思ってスルーすると許されず、何度も言われるので、「ああ、〇〇にしろってことなのね」と自動変換するようになってしまって。
そうするといつのまにか「世間的なウケはいいけど、好きじゃない方向」に進んでしまっていて。今そのことを後悔しているのです。
だから「自分で選びたい」みたいな気持ちが強くてですね。

しかしそれって、身内(というか毒親)だから謎の強制力が伴っただけで、友人なんかは本当に純粋に、というか単なる雑談的に「これいいよ~」と言ってくれているだけなんですよ。

頭ではわかっているのに、自動変換で謎に構えてしまう(ほんと厄介だな……私)ので、もっと気軽に捉えていきたいなーと思うのでした。

相手が「おすすめ」を求めてくれたとしても、ものすごく頭を使う作業だから難しい

その一方で、「何かおすすめありますか?」と聞いていただくこともあります(これ自体はありがたいしうれしい)。

しかし、これまた膨大な知識とか、その人の性格とか状況とか、いろんなものをひっくるめて判断しないといけないので、かなり頭を使う作業だよなあ、と思います。

本当に難しくて、実力のなさ?みたいなものを実感します。

Aという本が合うだろうと思って、Aをメインでおすすめし、一応補助的にB、C、さらに念のためにDの本もおすすめしておいたところ、最も「これではなかろう」なDの本がご本人に響くということもよくありますよね(洋服とかもそう!)。

同じ一人の人間であってさえも、そのときどきの状況とか年齢で、合う本は変わってくることもあり、ほんとに答えがないよなあー、と思っています。

それだけ人間って、複雑な存在というか……共通の面はありつつも人それぞれというか、同じ人は一人としていないんだなということを思います。

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おわりに

私は著者のような勇気は皆無、基本的に行動力のない人間なので、うらやましいなーと思いました。

でもやっぱり、初対面の人とこんなに会ったら疲労困憊で寝込むだろうな、とも思いました。笑

あとは、著者の生き方を見ていると、ずっと本をすすめる側の立場にいることが一貫していて、「好きなことって続けてしまうものなんだなぁ」というのも発見でした。