ししもとの読書ノート2.0

自分らしく生きるために知識をつける

一旦自分を捨てて人を真似してみると、自分の強みがわかってくる |感想『自分を捨てる仕事術』

「自分」が邪魔だった

今にして思えば、かつての私は、自分のために(=自分の能力を証明するために)仕事をしていたと思います。

自分が(とびきりでなくてある程度でいいから)有能である、と周囲に知らしめねばならない、と思っていました。

だから、縁の下の力持ち的な仕事を割当てられるとイライラしていました。
縁の下の力持ち的仕事って、ものすごく手間がかかったり大変だったりするわりに、目立たない(評価されにくい)からです。


そもそもなぜ自分の能力を証明せねばならなかったのか。
誰に対して証明せねばならなかったのか。

親です。
親に認められたかっただけなのに、どれだけ努力して結果を出そうとも、それが満たされないため、いつの間にか周囲に認められたいにすり変わっていました。

でもそれは結局、自分で自分を認められないから、他の誰かに認めてもらいたかっただけなのでしょう。

そんな若かりし頃の自分に読ませたいのがこちら(頑なだったので、読んでもスルーしただろうな……汗)。


石井朋彦『自分を捨てる仕事術‐鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド‐』WAVE出版(2016)

自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド-

自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド-

 

 

 

 

どんな本?

著者の石井朋彦さんはアニメプロデューサー。

21歳のときにスタジオジブリに入社、そこで鈴木敏夫さんから「自分を捨てて他人の真似をする」という仕事術を学んだそうです。

著者自身、「自分が自分が」というタイプだったそうですが、鈴木さんに「自分を捨てろ」と何度も言われます。

「これから3年間、俺の真似をしな。自分の意見を捨てて、くもりなき眼(これは『もののけ姫』の主人公アシタカの台詞です)で世界を観ること。それを3年間続けて、どうしても真似できないと思ったところが、君の個性ということになるから」

引用元:石井朋彦『自分を捨てる仕事術‐鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド‐』WAVE出版(2016)p.6


個性って、出そうとして出すものじゃなくて、出てしまうものなのですよね。

自分で出したいと思っている個性って、実は演じているものだったりするのかもしれません。演じているから、どこか奇妙な感じになったりする。
本来の個性をうまく使うことが大事になってくるのでしょう。

著者は、鈴木さんに反抗心を抱えたりしつつも、「自分を捨てる」の訓練を始めます。
具体的には、議事録を正確にまとめるとか、人の意見を読み直すとか。


ですが、著者が「自分捨てる」という教えの重要性に気づいたのは独立してからだそう。
仕事がうまくいかなくなり、いつの間にか「自分が自分が」が再発していることに気づいたそうです。

 そこでぼくは、自分発の企画ではなく、自分のことを必要としてくれている人からもたらされた企画を片っ端から受けることにしました。

引用元:石井朋彦『自分を捨てる仕事術‐鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド‐』WAVE出版(2016)p.43


求められていること(内容)=才能、ということですかね。

今でこそ、私自身も理解できますが、若いころは「こうありたい」が強くて、納得できなかっただろうと思います。

「自分が自分が」からは、どうしたら抜け出せるのでしょうか。

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広告終 

真似してみる

著者は、身近な友人や、劣等感を感じてしまう人を真似してみたといいます。

例えば、ヒット作を生み出している人は作品数自体が多いと知れば、仕事の絶対量と取引先を増やすとか。

真似したい人のやることをすべてメモしたり、読んでいる本をすべて読んだり。
しばらくすると、真似することによって得られた「新しい自分」が出てくる。

その一方で、どういう才能がないかもわかってくる。
つまり、どこを伸ばせばよいのかわかるというわけです。

自分を捨てて真似することを通して、コンプレックスが別なものに転化し、自分の血肉になったのです。

引用元:石井朋彦『自分を捨てる仕事術‐鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド‐』WAVE出版(2016)p.77


まさに冒頭で鈴木さんが著者に放った言葉のとおりのことが起こっていますね。

しかも、真似してみることによって、その人がどのように苦悩したり努力したりしているかもわかるようになる。

あの人は才能があっていいなあ、と思っていたのが、実はすごく努力しているんだな、とかわかれば、劣等感が薄らいだり、相手に対して親しみを覚えたりするかもしれません。

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もし私が若い頃に「自分を捨てて真似してみる」を実践していたとしたら、と考えてみました。

当時の職場に、すごく仕事ができて、皆から信頼されていて、とても優しい男性の先輩がいました。

先輩は人格者でありながらとにかく頭も良くて、私ごときにはとてもとても真似できないと思い込んでいたのですが、真似できるところも一つか二つくらいはあった気がします。

落ち着いてゆっくりしゃべるとか、周りの人を立てながらもきちんと主張する、とか。

あのとき先輩を真似していれば、「自分が自分が」が抑えられて、少しは仕事を楽しめたかもしれません。

先輩を真似する機会は逃してしまいましたが、今後そのような人と接する機会があったら逃すまい、と思ったのでした。

仕事上の人でなくても、尊敬できる友人の真似をしてみる、というのもアリですね。

でも、いざ「自分を空っぽにして、真似するぞ」と想像してみると、恐怖みたいなものが襲ってきました。

全く自分を捨てられていません(汗)
今の自分に、ある程度納得しているとも解釈できます(あえてポジティブに捉えれば)。

「こんな自分は嫌だ!」と強く思ったときが変わるチャンスなのかもしれませんね。

おわりに

ある程度年齢を重ねると、「自分を捨てる」というか「いいなと思う人の真似することの大事さ」がよくわかってくるのですが、若くて焦っているときほど、「自分が自分が」になってしまいますよね。

人によりますが、「自分が自分が」が劣等感から生じる焦りではないか、ということを自分に問うてみてもいいかもしれないです。

もちろん、自分を捨てずに貫くほうが結果を出せるタイプの方もいます。
そういう人がいるからこそ、素晴らしい作品が生まれたりするわけで。

ただ、「自分はクリエイティブなんだぞ!」とか「特別なんだぞ!」と強く思っている(あえてそう思わずにはいられない)人にこそ読んでもらいたい気がします(過去の自分の経験を踏まえて)。

 

自分を捨てる仕事術【WAVE出版】

 


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