ししもとの読書ノート2.0

自分らしく生きるために知識をつける

好きなことを育ててビジネスに結びつける時代へ |感想『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』

稼ぐために働きたくない。

別の言い方にすると「お金さえ稼げればいいというわけでない。やりがいが欲しい」といった感じでしょうか。

会社員をしていた頃、私もまさにそんなことを思っていたので、読んでみました。

尾原和啓『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』幻冬舎 Kindle版(2017)

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

 

 

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どんな本?

「なんのために働くか」というモチベーションは、変化してきています。

戦後からの復興期においては、「モノがない」時代だったので、ないモノを埋める、というモチベーションが強烈でした。

何かを手に入れるといった「快楽・達成」を軸にがむしゃらにやってきたわけですね。


一方、今の30代以下は、生まれたときからすでに何もかも揃っていました。「埋めるものがない」わけです。

なので、上の世代のような「何かを手に入れる」といったモチベーションは希薄で、「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」といった軸のほうに重きを置いている、と著者はいいます。
(本書では、このような世代を「乾けない世代」と呼びます。)

モチベーションの種類が異なるので、上の世代からしたら、「最近の若者はやる気がない」と思えたりする。

乾けない世代からしても、上の世代がすでに作った大きな枠組・働き方・ルールに立たされているので、自分のモチベーションと求められるモチベーションが異なっており、ズレを感じる、と。

そういった働きづらさはあるにせよ、乾けない世代だからこそ、新しい価値を作れる、と著者はいいます。

その新しい価値は「偏愛(好き・ゆがみ)」から生じやすい。
「好き」を生きがいにしていくにはどうしたらいいか、というところまで言及された本です。

メインタイトルは「モチベーション革命」ですが、「好きなことを生きがいにし、さらにそれをビジネスにするにはどうするか」といったことに重きが置かれている印象を受けました。

よかったところ

新しい働き方のヒント

単純作業は今後AIがやるようになるだろう、というのはよく言われていることですね。
では、今後の個人の働き方として何が大切になるのか、というと。

嗜好性(好むこと)をどれだけ育て、ビジネスに変えていけるか、だそうです。

著者は阪神淡路大震災のボランティアの経験から、次のような考えに至ったそう。

単に自分が好きだったり得意だったりすることで、他の人にはできないことをひたすらやり続けていたら、次第に活動範囲が広がったり、自分の「好きなこと」自体がバージョンアップして、価値がどんどん上がっていったのです。

尾原和啓『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』幻冬舎 (2017)Kindle版 位置No.1121 

 

「自分が好き (or 得意)」×「他の人にはできない」
という分野を見つけられれば強いですよね。

もっといえば、「好きなこと」「得意なこと」「ニーズがあること」「稼げること」の四要素が重なるところが最強です。

「好き」を育てるにはひたすら没頭せよ(アウトプットは置いておいて)、とのこと。
(アウトプットを意識すると、他人軸や視点が取り込まれてしまって平坦化され、強みでなくなるかもしれないから)

個人的には、「何かに没頭する」って、それも一つの才能だと思うのですよね。
私など、一瞬没頭してもすぐに飽きてしまったりしがちですし。
(私の場合は、子供の頃に、何かに没頭していると「そんなに熱中するのはおかしい。キチガイ!」と諸々取り上げられたせいもあるかもしれませんが)

年齢を重ねるほど「没頭する」は難しくなると個人的には感じるので、若い方には、没頭できるうちに没頭しておくことをおすすめしたいです。
 

考えたこと

世代間ギャップはいたるところに

以下、読了後に考えたこと。

モチベーションの違いについて、「なんとなくは感じていたけれど」といったようなこときっちり言語化されていて、読んでいてスッキリしました。

そして、こういったギャップは仕事に限ったことではないなぁ、と思います。

わかりやすいのは「結婚・出産」ですかね。

上の世代からすれば、戦後は「産めよ増やせよ」でしたから、「結婚して一人前」「子供がいない=できない=かわいそう」がきわめて当たり前の概念でしたよね。

彼らにすれば当たり前すぎることなので、ほぼ雑談レベルで「結婚はまだか」とか「子供はまだか」とか子供がいたらいたで「二人目はまだか」となるわけですね。


最近では、結婚も出産も、するしないは選択できるようになりましたし、それが妥当と考えている世代からすれば「子供、子供って、無神経だなあ」となったり、「考えがあって自分で選択したことなのに、気の毒がられて逆につらい」となったりしますね。

前提が異なっているので、どんなに説明しても理解されにくい(もちろん物分かりのいい人もいらっしゃるでしょうが……私の親戚類、特に母方は戦争や戦後経験世代ということもあって、聞く耳ゼロ)。

だんだん人格否定されているような気にさえなってくるほど、上の世代の思い込みって強いです。
まぁ、前提が違うので、仕方ないと割り切るしかないでしょうが。


「男らしく」「女らしく」といった概念も変わってきていますよね。

私が子供の頃は「女は従順で」とか「男より優秀ではいけない」とか、何か挑戦しようにも「女の子なのだから(やめときなさい)」といった圧力が感じられたものです。
今でこそ人気の女子サッカーですが、女子がサッカーをやろうものなら「あんなのまるで男じゃない」と眉をひそめられたものです。

そういった雰囲気のなか、自分を抑えて生きていたら、あるタイミングから「女も男並みに働くべし」となり始め「えっ」と戸惑った方も多いのではないでしょうか。
「従順であれ(主体性を持つな)」と言われていたのに、「さあ好きなことをやれ」と言われても、好きなことがわかりませんよね。

男性も「男は稼いでいればいい」と言われていたのに、いつのまにか「育児や家事もやらねばならない」となっていて、「そんなの聞いてないよ」となかなか切り替えられずにいる人も多いのでは、と思います。


そう考えると、根深い問題だな、と。
かつての社会にあった風潮とか空気がそうさせている面もあるわけで。

結局、大元にあるのは「国の事情」なのだな、と思います。
「国にとって何が大事か」が人々の「価値観」を作っているのですよね。
戦後は復興が第一→「モーレツ社員礼賛」「産めよ殖やせよ」
労働人口が減ってきてピンチ→「女性もバリバリ働いてね」
的な。

この国で生かしてもらっている以上仕方ないですが、大きなものに振り回されているんだなぁ、と思います。

そのことに気づく人が増えたり、世界ではどうかといった観点が入るようになって、現在は「国の事情」よりも「個人の自由」が優先されるようになってきたのだと思います。
価値観の「過渡期」にあるのかな、と思います。

(だから、少子化の改善は当面は難しいのではないかと。
今の社会構造では、「女性も男性並みに働いてね」と「子供増やしてね」が十分に両立しないので。
両立させている人ももちろんたくさんいらっしゃいますが、個人の努力や工夫に頼っているところが大きいのではないかと)

結局のところ、「世間」とか「普通」というものは、「国の事情」によって大きく影響されるものだから、なるべくそういった声に左右されずに、自分はどうしたいか、ということを大事にしていこうと思ったのでした。
そのほうが死ぬときに後悔が少なそうだと(現時点では)考えるので。

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おわりに

上の世代にこそ読んでもらいたい本だと思いました。

著者も、実は「最近の若い人は……」と思っていた時期があるそうで。
でも、そもそものモチベーションに世代間で違いがあることや、今後の時代には若い人の「新しい価値をつくる力」が大事だと気づいて以降、考え方が変わったそうです。

とはいえ、こういった世代間ギャップって、イタチゴッコなのでしょうね。

私もモチベーション問題については、ぎりぎり若いほうに入りましたが、自分が高齢者になったら、おそらく「最近の若い人は」と思う立場になることが多々あるのでしょう。

若い頃、大人たちに圧力をかけられて辛かったので、年をとってもなるべく若者には優しくしたいな、と思ったのでした。