私はかつて会社員をしていたのですが、「組織に所属することは向いていない」と痛感して、今はフリーランス的な働き方をしています。
「組織に所属することが向いていない」と言うと、ものすごくエキセントリックな人間と思われるかもしれませんが、そういうわけでもなくてですね(と自分では思っている)。
どちらかというと、揉め事が苦手すぎるあまり、いろんな場面で「へいへい、わっかりやした」と迎合してしまう傾向があり、そうやっているうちに、勝手にストレスをためてしまう、というのが実情だったと思います。
フリーになってからは、あまりにも心地良く、のほほんと暮らしてきました。
金銭的には会社員時代のほうが圧倒的に稼いでいましたが、幸せ度は今のほうが断然高いです。
でもやっぱり、たまによぎるんですよね、お金のことが。
親や親戚が困窮しているのを見せつけられるときとか。
きちんと働いているのにお金の心配をする友人の姿を見たときとか。
年をとればとるほどお金がかかるようになってきた、と実感したときとか。
それで、以前本屋で見かけ、読みたいなーと思っていた本。
kindleUnlimitedで発見したので、読んでみました。
上田惣子『マンガ 自営業の老後』文響社 Kindle版(2017)
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どんな本?
著者はイラストレーター。
20代のうちから休みなく働いてきたものの、47歳頃から仕事の依頼が減り……不安に直面中、という方です。
そもそも何が不安かもよくわからないというところまで来てしまい、同業者や専門家の話を参考にしながら、すぐにとりかかれることに着手し、自分の老後について見通しを立て、不安を軽減する、という内容になっています。
税金などの小難しい話もほとんどないですし、とても読みやすい一冊かな、と思います。
不安すぎて何がなんだかわからない、という人におすすめ。
(それ以外の人にはライトすぎるかも)
本書のポイント
若いうちから老後に備えまくっている自営業者の例や、逆に備えていないのになんとかなってしまっている自営業者の例などが紹介されています。
実例なので興味深いです。
備えずになんとかなっている人も実在はするけれども、備えておかないと悲惨なことになるパターンが圧倒的に多いようです。
(参考記事)
experience.shishimoto-yuima.work
では具体的に、何から備えていったらいいのか。
そのあたりのことが詳しく書かれた本です。
90歳まで生きる場合の収支予測を立ててみるとか、年金や保険について考えるなど。
専門家の解説をマンガにしていますので、分かりやすいです。
感想
著者の絵を見て、「この人の絵、けっこういろんなところで見かけてきたぞ」と思ったので、かなり売れっ子だった模様。
ご本人も「寝る間も惜しんで仕事をしてきた」と描かれていますし、マンガ中の年収グラフを拝見しても、全盛期はかなり稼いでおられたようです。
それなのに!
それなのに、歳をとると、仕事がなくなるんだ……
と軽く衝撃を受けました。
著者の場合は、病気で休んだことも関係しているようですが、「かつて一緒に仕事をしていた編集者などが現場からいなくなる(昇進、定年退職など)」というのは、なるほど、と思いました。
もし自分が若い編集者だったら、と考えてみると……。
たしかに、すごく年上の人には頼みづらいかも。
読者の立場として考えてみても、若いころは「時代を感じさせる絵柄」って、それだけで興味が失せたりしましたし……。
新しい技術や情報についていけているか、という問題もありますよね。
たとえば教育カリキュラムなども、随時変わっていきますので、その都度ついていかないと、「一昔前の知識で書いている」ことになってしまいますから。
となると、仕事の依頼が若手や中堅のほうに行くのは非常に納得がいきますね。
私自身、大変、身につまされました……。
(今更ですが)
というわけで、ある程度の年齢になったら、仕事が減ることをあらかじめ織り込んでおかねばならないわけです。
年をとれば病気などの可能性も上がりますしね……。
そのために、「90歳まで生きるとして、収支予測を立てておく」というのが、大事になるんですね。
(高齢になってからの医療費などはわからないので、ネットで調べて平均値を使うなどすると立てやすいみたいです)
こうして現在の立ち位置がわかると、本業が減るという事態に備えてどうするか、という問題に進めるわけです。
そこで出てくるのが、年金とか保険。
本書では、著者が国民年金未加入者だったため、年金について詳しく描かれていました(これを機に加入されたそうです)。
専門家によれば、国の公的な年金制度は、民間のものより圧倒的にお得なのだそうです。
自営業者であれば、確定拠出年金と小規模企業共済は必須。
(詳しくは本書でご確認ください)
そのほかにも、「自営業だけど家を買っておきたい」とか「老後の収入確保のため、大家さんになるのはどう?」といったフリーランスの疑問あるあるにたいして、専門家がバシッと答えを出してくれています。
比較的基本の内容ではありますが、「意外と知らなかった」ということもあり、勉強になりました。
本書のなかで、私が一番「おお」となったのは、最終章の「一生黒字でいられる会計の知識」というところ。
キャリア30年以上のベテラン公認会計士のお話です。
テクニック的なことではなくて、「仕事に対する姿勢」のようなものですが。
印象に残ったところを引用します。
どんなにいい仕事も同じ人脈やクライアントから発生するひとつのプロジェクトは3年が最長ですよ
上田惣子『マンガ 自営業の老後』文響社 Kindle版(2017)p.201
さ……3年。変な汗が出ます。
でもなんか、わかる気がする。
ただがむしゃらにやればいいというのではなく、長期的な視点も必要です。
営業って自分を売り込んだり仕事をもらいにいくのではなく
専門性を磨き発注者の目に止まるようにする
常にステップアップを考えて動くことなんです
上田惣子『マンガ 自営業の老後』文響社 Kindle版(2017)P.202
ステップアップを具体的に言うと
ステップアップの基本は日銭を追わずに価値を追うことです
上田惣子『マンガ 自営業の老後』文響社 Kindle版(2017)P.203
たしかに……。
単価の安い仕事をたくさんやる、若いうちはそれでもいいかもしれません。
が、歳を重ねたとき、「特別な何か」がないと、先に述べたように依頼は若い人のほうにいってしまうんですね……。
だからこそ、専門性を磨いておこう、と。
専門性を磨くって、決して簡単なことではないし、時間もかかりますよね。
だから、一見、遠回りに見えてもどかしかったりするんですが。
同級生が先に進んで、自分が立ち止まっているように思えたりもするのですが。
そこは長期的に見ないといけないのですね。
(目の前の生活が崩壊したら元も子もないので、そこは気をつけねばなりませんが)
専門性を磨いておれば、60歳がピークになるそうです。
このように言ってもらうと、少しは希望が持てますね。
「ははあ、なるほど、専門性ね!」と非常に納得した私ですが、具体的なビジョンがわかず、まだ少々悶々としております。
少しずつ、考えながら試していこうと思います。
(決意を新たにしても数日後には忘れていたりするから……自分の書いたブログを定期的に読み返そうと思いました)
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おわりに
かわいい絵とは裏腹に、ヒヤッとするところも多々ありました。
老後の心配をしている友人を見て、なんとなくは共感しつつも、「まあ、あなたはきちんと勤めているんだし。まだまだ先だし」などと思っていたのですが。
友人が不安すぎるのではなく、私がのほほんとしすぎているのだ、と気づかされました(今更)。
だからといって、いきなり「不安モード」に入っても効率を落とすだけなので、コツコツやっていくしかないのだなあ、と思っています。