テレビ番組で特集されているのを見て「90歳すぎてフルタイム勤務!?」と衝撃を受けた記憶。書籍があったので読んでみました。
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どんな本?
著者は25歳のときに入社した会社に66年勤める92歳の女性(2022年時点)。
さすがに週3日とか時短とかですよね?と思いきや、9時~5時のフルタイムらしいです(ご本人の希望のようです、しかも通勤は片道1時間だそう。すご……)。
そんなスーパーウーマンが長年の会社員生活で見出した「長く幸せに働く秘訣63」が書かれた本です。
感想をひとことで言うと「会社員の鑑」。
そりゃこれ全部できる人は超優秀だわ。
こんな人材いたらどの会社だってほしいわ。
と思いました。
失礼ながら「さすがに92歳ともなると温情で雇ってもらってる面もなくはないよね?」と思っていたのですが、本書を読む限り全くそんなことはなさそう。
新しい技術にも抵抗がなく、高齢者にありがちな「昔の価値観押し付け」もなく、「このご年齢では特異的なのでは」と思わされるバランス感覚を感じました。
よかったところ
63もの秘訣が書かれていて、すべて「ほんとそう」という感じなので、とりわけ記憶に残ったところを紹介します。
部下から総スカン、からの対応がすごい
著者が40歳で課長になったときのこと。
決算期の直前、決算対応に向け、終業後に打合せをしようとしたそうです。
就業時間が近づき、「少し残ってください」と伝えたところ……
課長が指示したら、突然のお願いであっても、部下はいうことを聞いてくれると安易に考えたのです。
ところが、部下たちは「イエス」とも「ノー」ともいわずに、終業時刻を迎えると全員さっさと帰ってしまいました。それは、私に対する課員の明白な拒絶でした。92歳 総務課長の教え p. 155-156
これはショックですよね……
私が会社員をしていた頃ですら、いくら直前であっても、上司から「少し打ち合わせしたいから残って」と言われたら、よほどの用事がない限り「はい」の二つ返事でしたから……ちょっと衝撃です。
まだまだ女性が課長になるのは珍しい時代でしたから、単純に「女に上に立たれておもしろくない」みたいな反抗心を抱えていた人もいたのかもしれません。
私が著者の立場だったら、「女だからってなめられた!!」と立腹してしまうと思います(実際、会社員時代、部下に仕事を受けてもらえなかったときにちょっと思ってしまった)。
しかし著者は、情けない気持ちを抱えつつも、課員たちが残していった湯飲みを磨き(←まずこの時点ですごい)ながら、気づいたといいます。
課長としてやるべきなのは、指示を出す前に、一人ひとりが活躍できるように個々を磨き上げることではないかと。
92歳 総務課長の教え P.156
かっこよ。
落ち込んで拗ねるでもなく、上司に言いつけるでもなく、自らを振り返る。
さらに。
翌朝、私は「昨日は突然、打ち合わせをするなんて指示を出してごめんなさい。これからもみなさんと仕事がしたいから、一緒にやっていきましょう」と素直に頭を下げました。
それからは自分の指示通りに動かそうとはせず、「みんなで成長しよう」というスタンスで臨みました。すると、みんなが私と並走してくれるようになり、懸案だった決算も無事に乗り切ることができました。
P.156-157
素直に頭を下げる……これ、意外と難しいものですよね。
私なら「いやいや、上司の指示には従うものでしょ」と思い続けてしまって、できるかどうか自信がないです……。
でも、素直に謝られたら、反発心を抱いていたとしても「お、おう」という感じで戦意消失というか……それ以上反抗する気にはならないですよね。
なるほど、こういう冷静な考え方ができる方だからこそ、年齢関係なく雇いたくなるのですね。
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おわりに
本書を通して、変化に柔軟で、前向きな著者の姿に驚かされました。
私自身、まだまだやりたい仕事がいっぱいあるのです。私の根底には、なんでもプラスにとらえる考え方がありますから、100歳まで働くのは難しいと思っていません。
92歳 総務課長の教え P.179
しかも、100歳で退職したら、エッセイを書いてみたいのだそうです。
すごいバイタリティ。
できると思ってらっしゃるから、実際にできるんですよね。
私なんぞ、基本的にネガティブな人間ですので、「あーあ、世界情勢も不穏だし、少子化だし、日本、どうなっちゃうんだろう」などと最近思いまくっているので、反省しました。
私は92才になるいまでも、昨日より今日、今日よりも明日のほうが、ちょっぴり成長しているという実感があります。
今日より明日は少しでも成長していると思うからこそ、「今日頑張れたら、明日も頑張れる」のです。
P.20
見習いたい……(一瞬「私も前向きに行くぞ」と思うけれど数日で戻る人間)。