書店の平置きを眺めていて、なんとなく気になっていた本。
Kindle Unlimitedで発見したので、読んでみました。
南章行『好きなことしか本気になれない。』ディスカヴァー・トゥエンティワン Kindle版(2019)
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どんな本?
読み始めるまで知らなかったのですが、著者は「ココナラ」というサービスの創始者。
ココナラは「みんなの得意を売り買い」とうたっているように、「スキル」を売買するシステム。
モノを売るのはわかるけれど、スキルを売る??
「スキルって、(小規模でも)売れるんだぁ……その手があったのかぁ」と最初は驚いたものです。
本書は、著者がココナラのサービスをつくるに至る理念や経緯が詰め込まれた本、といったところでしょうか。
コアとなる考え方を提示しつつ、著者の具体的な体験談で肉付け、といった感じの本です。
ココナラや、創始者の南氏に興味がある人にはもってこい。
まあ、ひとことでいうと、「バリバリ起業したい若い人向け」かな、と。
そうでない人(起業は考えていないとか、目指す分野が全然違うとか)は、体験談の部分は具体的すぎて逆にピンとこない可能性があるので、他の本のほうが向いているかも。
たとえば(参考記事)
experience.shishimoto-yuima.work
本書のポイントメモ
今後、少子高齢化はますます進み、かつ、寿命が伸びて人生100年時代ともいわていますね。
となると、「正解がない世界」あるいは「予測が立たない世界」に入る、と著者はいいます。
これまでなら、「60歳定年」として計画すればよかったキャリアも、今後は「80歳まで働く」を目標にせねばならない。
これまでの「年功序列」や「60歳定年」に則れば、「イヤな仕事でもなんとか根性で乗り切る」ということもできたかもしれませんが、年功序列が崩れかつ「80歳まで働く」と考えると、「我慢や根性で乗り切れるのか?」と著者は問いかけます。
長く働くには「好きで得意な部分を伸ばす」ということを視野に入れたほうがいい、というわけですね。
ただし、これにも注意点がありまして。
過去にこだわったり、正当化する(例:司法試験の勉強をしたが弁護士にはなれなかった。勉強したことがもったいないので企業の法務部に就職する、など)と、「好き」とか「モチベーションの湧くこと」からは離れる場合があるので、要注意。
こういった罠に陥らないためには、常識やこれまでの慣習に流されるのではなく「自分の価値観をもつ(何に喜びを感じるか、どう貢献していきたいか)」ことや「セルフリーダーシップ(自分で決めて遂行していく)」ことが大事だそうです。
「80歳まで働く力」をいかに養っていくか、ということを著者自身の体験を交えながら解説しています。
感想
「長く働くことを考えると、好きで得意な部分を伸ばしたほうがいい」というところは、非常に共感しました。
私もかつて「親や親戚に文句を言われないから」とか「世間では王道だから」と、前職を選びましたが、そこまで興味がなかったので、早々に「辞めたい」と思うようになってしまいました。
「そこまで興味がない」からこそ、その分を補おうと、本当に頑張ったんですよ。
しかし、頑張れば頑張るほど、劇的に増すのです、しんどさが(興味がないから)。
「これではとてもじゃないが定年の60歳までもたない」と思いました。
けれども、「せっかく入った会社」ですし、世間でいえば「もったいない」「我慢してこそ仕事」「給料=我慢料」ですし、「辞めたいけれども辞めてはいけない」状態で数年悩みました。
これがもう、本当に苦しかったんですよね。
人の思惑に縛られるというのは、過去の経験に縛られるのと同じで、未来の選択肢を狭めることになる。
南章行『好きなことしか本気になれない。』ディスカヴァー・トゥエンティワン Kindle版(2019)位置No.485
辞めたい気持ちを限界まで抑圧した経験があるからこそ「ああ、私は、自分の意志で「やりたい」と思ったことでないと耐えられないのだな」と心の底から実感したんです。
本書では「セルフリーダーシップ(自分で決め、遂行し、自分で評価する)」が大事だとことごとく言われていますが、私の場合はどちらかというと「セルフリーダーシップを抑えていた」気がします。
今はその制限は外すことができたので、80歳まで働くための要素の一つは、一応はクリアしているかな、と。
また、もう一つの要素「自分の価値観をもつ」についても、前職を辞める前後、辞めて以降、ずっと考えてきたので、ある程度は認識できているつもりです。
では、私に何が足りないかというと。。。
三要素のうち最もベーシックであろう「スキル」だな、と思いました。
これまで、「苦手を克服する」ばかりに気を取られていたから。
「苦手を克服」って、一見すばらしいことのように思われたりしますが、もともと苦手なものは、頑張っても「そこそこ」にしかならないんですよね。
これは極端な例ですが、運動が苦手で嫌いな人が相当努力しても、(もちろんある程度はうまくなるでしょうが)オリンピック選手レベルにはなるのはほぼ不可能ですよね。
(そもそも嫌いなのだから長期間のキツイ練習に耐えられないでしょう。)
「苦手を克服」に時間をかけ、「好きを伸ばす」を怠ってきたため、私は「そこそこ以下」のスキルしか持っていない、と気づきました。
ぜんぶ中途半端であるという自覚があります(汗)。
まあ、ここで気づけて良かった、ということで、今後は「複数の好きを長期的に伸ばす」ということを意識したい、と改めて思いました。
長く働き続けるには、我慢ではなく、やっていてわくわくすることを見つけるべきだ。その意味で、心が否定するものからは、全力で逃げたほうがいい。
南章行『好きなことしか本気になれない。』ディスカヴァー・トゥエンティワン Kindle版(2019)位置No.504
著者によれば「やると決めたら本気でやれ」とのこと。
成果を出すにはそれがベストと理解していますが、私の場合は根詰めすぎて嫌になるケースがよくあるので、嫌いにならないようにペースを調整しようかと思います。
(これも、80歳まで働くための知恵といえるかも)
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おわりに
現在、新型コロナウイルスの流行で、社会が混沌としていますが……。
在宅勤務が推奨されたり、時間差通勤だったり。
あるいは本業が減少して副業を考えなければならなかったり、とイレギュラーな状況かと思います。
この機会に、今後のキャリアというか、「80歳まで働くとしたら??」と考えてみるのも有益かもしれませんね。
岐路に立たされたときに刺さりそうな文章を引用します。
「これはありえない」という怒り、「こんなことに人生を使っていいのか」という絶望といった感情は、その道が間違っていること、あなたには他の可能性があること、方向転換をするチャンスは今だと教えてくれる声になる。
南章行『好きなことしか本気になれない。』ディスカヴァー・トゥエンティワン Kindle版(2019)位置No.754
どれが正解かはわからないし、確かめる術はない。どうせわからないなら、そのときの自分の気持ちに正直になることが、最良の意志決定になると僕は信じている。
南章行『好きなことしか本気になれない。』ディスカヴァー・トゥエンティワン Kindle版(2019)No.681