「ふつうはこう」という激流に押し流されて会社員になった結果、早々に「しまった……」と後悔した二十代。
そのころから私の中で「仕事」は頭を悩ませるものでした。
仕事に限らず、世間的によしとされているものは選びやすいですよね。
親や親戚も喜ぶし、「世間」から後ろ指をさされることもない。
だからといって、世間的に良しとされているものが自分にフィットするかというと、そうとも限らないのが難しいところです。
三十歳手前で会社員を辞め、休み、フリーになり、少し道が開けてきたとはいえ、いまだに手探りの部分もある状態の私。
そんなとき、旅行先で発見した本がすごく良かったので感想を記します。
西村佳哲『自分の仕事をつくる(ちくま文庫)』筑摩書房(2009)
2003年に晶文社から単行本で出版され、2009年に筑摩書房から文庫化。2018年1月時点で第十九刷ですから、ロングセラーですね。
普段よく行く書店では見かけなかった(これだけ売れているのだから、在庫検索すればあるのでしょうけど)ので、旅先ならではの出会いだといえるかもしれません。
どんな本?
著者は働き方研究家(プランニングディレクターとしても活躍、美術大学などでも授業を持っている方です)。
30歳のときに会社を辞め、働き方について調べるようになったそう。
「いいモノをつくっている人は、働き方からして違うはずだ」との考えのもと、いくつもの仕事場を訪ね、見聞きし、考えたことがまとめられているのが本書です。
訪問先としては、デザインやモノづくりに関わっている人がメイン。
もちろん、その分野以外の人にも参考になる部分はたくさんあると思います。
が、個人的には、やはりモノづくりに関わる人(プロでも趣味でも)に最適の一冊だと思います。
ノウハウ本ではなく、自分で自分の仕事について考えるための本、という感じです。
よかったところ
一流の仕事は、人々に肯定のメッセージを与えることができる
詳細は>>>一流の仕事に感動するのは「あなたは大切な存在だ」というメッセージを感じるから |感想『自分の仕事をつくる』
いいモノを作っている人に共通する働き方とは?
詳細は>>>いいモノを作っている人の働き方に共通すること2つ|感想『自分の仕事をつくる』
おわりに
本書は実用書ではないので、必ずしも「わかりやすい答え」が得られるわけではないかもしれません。
いろんな方の働き方のエピソードを読みながら、「これは良さそうだな」とか「こういう考え方もあるのか」とか思いながら、自分はどうしたいのか、を自分で考えることにこの本の目的があるのだと思います。
一人一人が働き方について考え、工夫し、めいめいの「いい仕事」を手がけてゆくことで、社会全体が確かな質をともないながら、変わってゆくだろう。
引用元:西村佳哲『自分の仕事をつくる(ちくま文庫)』筑摩書房(2009)p.277
旅行先で購入したということもあって、忘れられない一冊になりました。
これから何回も読み直していきたいと思っています。
続編として、『自分をいかして生きる』という本もあります。
こちらは「どういう仕事の仕方をするか」というよりは「何の仕事をするか」という内容です。
やりたいことがわからなくて悩んでいる人は『自分をいかして生きる』のほうがおすすめかなと思います。
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